2012年2月1日水曜日

映画『ヒミズ』を観て。

この間の1/29(日)、渋谷のシネ・クイントにて映画『ヒミズ』を観た。

以下、だらだらととりとめのない感想やら思いつくまま。。。
ネタバレも若干含まれているかも知れないので、悪しからず。

まずは、茶沢さんの問題は何も解決しておらず、彼女は彼を待つ間独りで闘わなければならない。彼女のほうがある意味過酷な未来のような気がしてならない(茶沢景子の家庭環境は特に原作にはない要素なので個人的には要らなかったかもな~と思ったけど、震災後、園子温監督が脚本を大幅に書き換えたということも影響しているのかも知れないけど、してないかも知れない。)

住田くんはある意味、父親との関係を経つことに成功したが、実際は依存性のある怒りであるにも関わらず、解決せぬままその対象が居なくなってしまっただけであって、しかも自分の手で殺めるという実感のある形で、という絶ち方は、父親へのコンプレックスと嫌悪感の塊をぶつけるその対象そのものが消滅してしまっているために、対峙した先にあるかも知れない親からの愛情・無償の愛で包んでもらう・何ものにも囚われず自分を認めてもらうということが永遠に叶わないということになる。   深刻だ、これは。対峙しようにも存在しないのだから、対峙することができない…

私が女性だからそう感じるのかも知れないが、母親は二度と戻らないと思うし、面会にも行かないだろうと推測するのだけれど、それも彼が欲しかった親からの愛であり、それは一生欲しくても貰えないということを意味する。 金子ローンの社長、茶沢さん、二人ともが言った同じ意味合いの言葉が印象的。「君はいま病気なんだよ」「色々選択肢があるのになぜ大変な方を選ぶのだ?」 だけど、病むことでしか反発する術を持てない人間にすれば、普通に生きるほうが果てしなく過酷であり、ツラい状況であって、そこに立ち止まる事で安心しているという事も多々ある。そうする道しか生きられないのだ。

所謂、「普通に生きる」とは、案外体力・精神力が必要であり、闇に息を潜めること・病気である状況に留まることで身を守ることのほうが楽でもある。実際、自分もかつて心療内科へ通っていた時期があり、その時「この闇は永遠に続くのかも知れない」と思うと気が狂ったほうがマシだ、と思っていた。抗鬱剤を処方されているその事実だけで、安心している自分がいた。(何かへの依存)

だけど、それは一生続けられない。いつかは各々抱える問題や何かにケジメをつけて先に進んで行くしかないように思う。 その対象にタイマンを張るのは他でもない、自分自身だけなのだ。愛する人や大切な人、誰も手など貸せない。貸したくても貸せないのだ。それは一生かかっても対象物が消滅しても、自身自身の中で偶像としてイメージとして存在する限り、対峙せざるを得ないのだろう。 その行為は再度言うけれども、かなり体力が必要だし、精神力もいる。だからその自分をとにかく理解することから始めないといけない。まずは自分で自分を客観的に見、「これでいいのだ。よく独りで頑張ってきたなあ。」と褒めてあげないと、認めてあげないことには先には進めない。

君は一生、そこに立ち止まるのかい? 
そうじゃないのなら、行動で示せよ!
生きられる時間など宇宙規模でいえば一瞬だ!瞬く間に一生など終わる。
自分だけの価値観で見ている世界などおそろしく狭い、狭すぎるんだよ。
それは一歩外へ出れば無数にある。無数にあるんだよ!

それを知ろうと思えない、それに気付けない自分が見えずに苦しんでるだけなら
もしくは気付きたくないのならそこに一生佇んで絶望していればいい。 

何となくそんな事を考えていた。

漫画原作には住田くんと茶沢さんが初めてSexに及ぶシーンがある。私はこれには重要な意味があると解釈していたが、映画では描かれなかった。監督の解釈では重要だと思わなかったのだろうか?もしくは大人の事情というやつか?

茶沢さんのイメージはもっとませててエロくて、もっと現実的思考なキャラクターだった。彼の一挙一動にドキドキしたりしない。ただそれは私の原作を読んだ上での解釈であり、監督のそれとは違う。

原作は全体的に混沌としていて陰鬱で出口が本当に無く描かれている。私のラストの解釈は監督とは真逆だった。 園子温監督って割とポジティブな思考なんだろうかと思った。私なら救いの無い描き方で終わっているだろう。私は刹那的なのか?

漫画から入っていて世界観が気に入っている場合、う~んと唸ってしまう人も多いような気はする。古谷実の漫画『ヒミズ』が好きな人には少し勧めるのを躊躇う作品になっていると思った。ベースだけ骨格だけ、と思って別物として観るぐらいでもいいかも知れない。

YouTubeで観た予告編での変な主題歌チックな曲は本編には使われていなかったので、それにはホッとした。ちょっと気になったのは住田くんが父親を殺してしまい、精神的に崩壊していく描写の中で、絵の具を身体中に塗りたくるシーンがあったんだけど、赤い絵の具を舌の上にべったりチューブから出してしまうので、ハラハラした。赤ってカドミウムを含むということを聞いたことがあったので、大丈夫かなーと、勝手に心配して観てた。




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